2012年 10月 07日
羽のない攪拌機について考えてみました |
今日は3連休の中日。
熊本は晴天に恵まれて、道路も混雑していました。
こういう日に自前のバイクでもあればツーリングに行くのに…(汗)
さて、少し古い情報ですからご存知の方も多いでしょう。
日経ものづくり3月号の「多視済済」で紹介された羽が無い攪拌機を開発した村田さんの記事が同じく日経ものづくりの10月号に掲載されていました。
構造は写真もしくは雑誌を参照ください^^。
半球状の先端に、垂直方向と水平方向にクロスした穴が開いているだけ。
これを回転させると・・・あら不思議。中の液体がきれいに撹拌される^^
・・・・
記事によると、もともと新しい攪拌機を開発しようという動機ではなく、工程のチョコ停の原因を調べていくうちに、塗料の撹拌工程で攪拌機の羽が容器の内側の金属を削ってできる金属糸ができることではなかろうかと。
であれば、棟梁を入れている一斗缶の内壁を削らずに撹拌できればいいわけですから、そのための形状をいろいろと試行錯誤していく中で、偶然できたと書かれていました。
しかもその取り組みは会社のためなのに、「時間外に、自腹で」。
その改善への執念が、最終的にこのような今までにない攪拌機を生み出したのだと思います。
で、その構造は極めてTRIZ的な視点に満ち溢れています。
まず、羽を無くすという大胆な発想。
これは、技術システムの理想性を大事にするTRIZでは「究極の理想解」を考えることと同じです。
このシステムの目的機能は何か? 塗料をかき混ぜること。
では、そのための究極の理想解は何か? 羽が無くても塗料がひとりでに混ざる事。
では、それを阻害しているものは何か? 塗料を撹拌させるためには、何らかの物体やエネルギーが必要。
では、それをどのようにして取り除くことができるか? 塗料をかき混ぜるために羽以外の何らかの物体やエネルギーがあればよい。
・・・・・
その解決に、まずはSFR(システムの内部にすでに存在していて使われていない属性)を利用できないか?と聞いてきます。
そうすると、既存の技術システムを構成している様々な要素や、スーパーシステムの属性を様々な角度から検討することになります。
たとえば、羽を回すスクリューの軸、モーター、作業者の手、塗料、一斗缶・・・。
これらに基づいて、発明原理や進化のパターン的な思考でアイデアを出していきます。
その時に究極の理想解では、先ほど述べたSFRという視点を大事にしますから、スクリューの軸の太さとか長さ、モーターの発する磁界、塗料の粘度とか重量などについてそれらをうまく利用できないかという思考になります。
・・・・
あ! 塗料の重量と粘度をうまく利用できないかな?と考えた人がいても不思議ではありません。
問題は、それを「どのように」利用するかがアイデアなのですが(汗)
今回はそれを、半球状のボールを回転させることで、先端に開けた穴から塗料を吸い込み、それとクロスする横穴から塗料を吐き出すことで撹拌ができるのではないかとつながりそうです。(もちろん仮説ですからやってみなければわかりません。)
実際、その時に利用したのは塗料の重量であり粘度、および半球状のボールの遠心力という事になります。
こうして、羽のない攪拌機のコンセプトはTRIZからでも生まれそうに思いました。
もちろん、TRIZで出したコンセプトは「仮説」ですから、「試作検証」されてこそその効果が明らかにされます。
しかし、そのコンセプトが持つ可能性に対して、どれだけの目利きができるかで、その企業の競争優位が明らかになるように感じています。
今回の開発者である村田さんは最後に「この攪拌機の開発ではいろいろな失敗がありました。失敗の原因を探り、その失敗を100%再現できればそれは成果になります。今はとにかく失敗しないことの方が重要になってますが、実はそれは成功していないことの裏返しなんですね。「失敗しないように」と考えていると萎縮するばかりです。失敗したら原因を探って直せばいいのですから。それよりも成功をしていないことの方がよっぽど怖い。チャレンジを忘れてしまいますから。」と。
*一部中略しています。
前回のブログで、早く失敗することがイノベーションのカギだと書きましたが、奇しくも今回の記事でもイノベーションを起こした方から同じような事を聞いたように思いました。
・・・・・・
明日も休日の方が多いでしょう。
残り一日、リフレッシュして新しい一週間に備えましょうね。
*内容に共感していただけたら、「いいね」ボタンを押してもらえると、著者がとても喜びます(笑)
熊本は晴天に恵まれて、道路も混雑していました。
こういう日に自前のバイクでもあればツーリングに行くのに…(汗)
さて、少し古い情報ですからご存知の方も多いでしょう。
日経ものづくり3月号の「多視済済」で紹介された羽が無い攪拌機を開発した村田さんの記事が同じく日経ものづくりの10月号に掲載されていました。
構造は写真もしくは雑誌を参照ください^^。
半球状の先端に、垂直方向と水平方向にクロスした穴が開いているだけ。
これを回転させると・・・あら不思議。中の液体がきれいに撹拌される^^
・・・・
記事によると、もともと新しい攪拌機を開発しようという動機ではなく、工程のチョコ停の原因を調べていくうちに、塗料の撹拌工程で攪拌機の羽が容器の内側の金属を削ってできる金属糸ができることではなかろうかと。
であれば、棟梁を入れている一斗缶の内壁を削らずに撹拌できればいいわけですから、そのための形状をいろいろと試行錯誤していく中で、偶然できたと書かれていました。
しかもその取り組みは会社のためなのに、「時間外に、自腹で」。
その改善への執念が、最終的にこのような今までにない攪拌機を生み出したのだと思います。
で、その構造は極めてTRIZ的な視点に満ち溢れています。
まず、羽を無くすという大胆な発想。
これは、技術システムの理想性を大事にするTRIZでは「究極の理想解」を考えることと同じです。
このシステムの目的機能は何か? 塗料をかき混ぜること。
では、そのための究極の理想解は何か? 羽が無くても塗料がひとりでに混ざる事。
では、それを阻害しているものは何か? 塗料を撹拌させるためには、何らかの物体やエネルギーが必要。
では、それをどのようにして取り除くことができるか? 塗料をかき混ぜるために羽以外の何らかの物体やエネルギーがあればよい。
・・・・・
その解決に、まずはSFR(システムの内部にすでに存在していて使われていない属性)を利用できないか?と聞いてきます。
そうすると、既存の技術システムを構成している様々な要素や、スーパーシステムの属性を様々な角度から検討することになります。
たとえば、羽を回すスクリューの軸、モーター、作業者の手、塗料、一斗缶・・・。
これらに基づいて、発明原理や進化のパターン的な思考でアイデアを出していきます。
その時に究極の理想解では、先ほど述べたSFRという視点を大事にしますから、スクリューの軸の太さとか長さ、モーターの発する磁界、塗料の粘度とか重量などについてそれらをうまく利用できないかという思考になります。
・・・・
あ! 塗料の重量と粘度をうまく利用できないかな?と考えた人がいても不思議ではありません。
問題は、それを「どのように」利用するかがアイデアなのですが(汗)
今回はそれを、半球状のボールを回転させることで、先端に開けた穴から塗料を吸い込み、それとクロスする横穴から塗料を吐き出すことで撹拌ができるのではないかとつながりそうです。(もちろん仮説ですからやってみなければわかりません。)
実際、その時に利用したのは塗料の重量であり粘度、および半球状のボールの遠心力という事になります。
こうして、羽のない攪拌機のコンセプトはTRIZからでも生まれそうに思いました。
もちろん、TRIZで出したコンセプトは「仮説」ですから、「試作検証」されてこそその効果が明らかにされます。
しかし、そのコンセプトが持つ可能性に対して、どれだけの目利きができるかで、その企業の競争優位が明らかになるように感じています。
今回の開発者である村田さんは最後に「この攪拌機の開発ではいろいろな失敗がありました。失敗の原因を探り、その失敗を100%再現できればそれは成果になります。今はとにかく失敗しないことの方が重要になってますが、実はそれは成功していないことの裏返しなんですね。「失敗しないように」と考えていると萎縮するばかりです。失敗したら原因を探って直せばいいのですから。それよりも成功をしていないことの方がよっぽど怖い。チャレンジを忘れてしまいますから。」と。
*一部中略しています。
前回のブログで、早く失敗することがイノベーションのカギだと書きましたが、奇しくも今回の記事でもイノベーションを起こした方から同じような事を聞いたように思いました。
・・・・・・
明日も休日の方が多いでしょう。
残り一日、リフレッシュして新しい一週間に備えましょうね。
*内容に共感していただけたら、「いいね」ボタンを押してもらえると、著者がとても喜びます(笑)
by kuwahara_TRIZ
| 2012-10-07 17:50
| TRIZ