2005年 09月 11日
TRIZでの事例3:潜水艦浮上装置 |
昨日は次男のサッカーの試合でした。
とは、言っても先週の土日も試合だったのですが・・・(笑)
で、久しぶりにブロック優勝しました! 本当は今日ブロック毎の勝者で決勝だったのですが、選挙で中止に。
まぁ、おかげで今日はゆっくりしようかな。
今日の話題は、リバースTRIZの第3弾です。
2005年7月26日の新聞(何新聞かがわからないのが・・・私らしい(哀))に、マッコウクジラをまねて浮力調節をするシステムを龍谷大学の研究チームが開発したという記事がありました。
(*実際には、我々のTRIZコンサル仲間である井坂さんから教えて貰った記事なのです。井坂さん、ありがとうございます!)
記事から引用します。
「浮力調整装置は注射器の内部にパラフィンワックスを満たし、ニクロム線を接続した構造。ニクロム線に電流を流すとパラフィンワックスが加熱されて溶け出し、電流を止めればワックスが水で冷やされて固まる。パラフィンワックスは固体から液体へ変化するときに体積が約2割増える。体積が増えると比重が軽くなるので浮き、冷やして固まると沈む。<後略>」
これは、TRIZの発明原理の中の一つ「相変化原理」の活用だと類推できます。
相変化原理とは、「物体の相変化に伴う現象(例えば体積の変化や、熱損失など)を利用する。」事で問題解決が図れないかという提案です。
この新聞の記事だけでは、実際にどういう矛盾を解決したかを推察するのは難しいのですが、潜水艦の浮力調整は通常バラスト水や重りを使いますから、以下のような矛盾が考えられそうです。
改善する特性:浮力を得たい(調整したい)。 ⇒ 圧力
悪化する特性:たくさんの水(の体積)が必要。 ⇒ 静止物体の体積、物質の量
そうすると、マトリックスからは「パラメータ変更原理」や「相変化原理」が出てきます。
「パラメータ変更原理」では、以下のようなことを考えます。
・気体、液体、固体などといった物体の物理的状態を変更する。
・柔軟性の程度を変更する。
・温度を変更する。
これと、「相変化原理」を組み合わせれば、「温度変化に伴う現象を利用することで問題解決できるアイデアがないか」と考える方向性が明確になりました。
次は、その具体的な手段です。
水を暖めたり冷やしたりすると体積が変化する事は、誰でも知っていることです。
でも、変化量は小さいからねぇ・・・。
じゃ、もっと変化量が大きくて、常温近辺で液体と固体を切り替わるモノって何か無いかな?
実はアイデアの具現化には、専門的な知識が不可欠です。
アイデアをより具体的に表現する際には、いろいろな知識が無いとどうにもなりませんから。
上記の場合、通常はEffects(=TRIZソフトにある知識データベース)を使って具体的なアイデアを出します。
しかしながら、すべての情報がそこにあるわけではない事は気をつけておかねばなりません。アイデアを具体化する手段は別にソフトの中だけにあるのではないのです。
この場合、そのヒントを自然界からのアナロジーに求めたわけですね。
そして、マッコウクジラが潜水したり浮上したりするときに活躍する「脳湯」と呼ばれる油に着目したわけです。
ただし、脳湯をそのまま潜水艦に持ってくるわけには行きません。
更にアイデア出しを進めます。
そしてまさにパラフィンワックスが同様の挙動を示すことに気づいたのです。
多分、この技術を開発した先生達はTRIZについて知らないと思います。
したがって、実際の思考は、
「潜水艦の浮力調整を実現したい。⇒潜水艦みたいに水の中で浮いたり沈んだりするものって何かないかな?(アナロジー)⇒鯨なんてぴったり⇒じゃ、鯨ってどういう風に浮いたり沈んだりする?⇒脳湯ってなに?⇒・・・」
ってな感じで、最後はパラフィンにたどり着いたのだと思います。
上記の場合の発想では、潜水艦から鯨をアナロジーするところが恣意的になりますから、ここが問題解決の方針におけるクリティカルポイントです。
TRIZを使えば、問題解決の方向性を「相変化原理」という先人達の知恵に基づいて示してくれますから、このクリティカルポイントに恣意性が入らなくなり、多くの場合の問題解決スピードが上がります。
しかし、最終的にアイデアを具体的にするのは、結局開発者の知識であることは肝に銘じておかねばなりません。
相変化を利用すればいいのだけど、その具体化に知識が無ければ結局何も生まれませんから。
常日頃から、あらゆるものにアンテナを立てておくこと、しかもそれをストックしておくことが、優れた問題解決の基礎になるのです。
本日もお読みいただいてありがとうございます。
ご意見や感想などありましたら、コメントをいただけるとうれしいです!
必ずご返事は差し上げます。
また明日も読みたいと思ったら是非クリックをお願いします!
とは、言っても先週の土日も試合だったのですが・・・(笑)
で、久しぶりにブロック優勝しました! 本当は今日ブロック毎の勝者で決勝だったのですが、選挙で中止に。
まぁ、おかげで今日はゆっくりしようかな。
今日の話題は、リバースTRIZの第3弾です。
2005年7月26日の新聞(何新聞かがわからないのが・・・私らしい(哀))に、マッコウクジラをまねて浮力調節をするシステムを龍谷大学の研究チームが開発したという記事がありました。
(*実際には、我々のTRIZコンサル仲間である井坂さんから教えて貰った記事なのです。井坂さん、ありがとうございます!)
記事から引用します。
「浮力調整装置は注射器の内部にパラフィンワックスを満たし、ニクロム線を接続した構造。ニクロム線に電流を流すとパラフィンワックスが加熱されて溶け出し、電流を止めればワックスが水で冷やされて固まる。パラフィンワックスは固体から液体へ変化するときに体積が約2割増える。体積が増えると比重が軽くなるので浮き、冷やして固まると沈む。<後略>」
これは、TRIZの発明原理の中の一つ「相変化原理」の活用だと類推できます。
相変化原理とは、「物体の相変化に伴う現象(例えば体積の変化や、熱損失など)を利用する。」事で問題解決が図れないかという提案です。
この新聞の記事だけでは、実際にどういう矛盾を解決したかを推察するのは難しいのですが、潜水艦の浮力調整は通常バラスト水や重りを使いますから、以下のような矛盾が考えられそうです。
改善する特性:浮力を得たい(調整したい)。 ⇒ 圧力
悪化する特性:たくさんの水(の体積)が必要。 ⇒ 静止物体の体積、物質の量
そうすると、マトリックスからは「パラメータ変更原理」や「相変化原理」が出てきます。
「パラメータ変更原理」では、以下のようなことを考えます。
・気体、液体、固体などといった物体の物理的状態を変更する。
・柔軟性の程度を変更する。
・温度を変更する。
これと、「相変化原理」を組み合わせれば、「温度変化に伴う現象を利用することで問題解決できるアイデアがないか」と考える方向性が明確になりました。
次は、その具体的な手段です。
水を暖めたり冷やしたりすると体積が変化する事は、誰でも知っていることです。
でも、変化量は小さいからねぇ・・・。
じゃ、もっと変化量が大きくて、常温近辺で液体と固体を切り替わるモノって何か無いかな?
実はアイデアの具現化には、専門的な知識が不可欠です。
アイデアをより具体的に表現する際には、いろいろな知識が無いとどうにもなりませんから。
上記の場合、通常はEffects(=TRIZソフトにある知識データベース)を使って具体的なアイデアを出します。
しかしながら、すべての情報がそこにあるわけではない事は気をつけておかねばなりません。アイデアを具体化する手段は別にソフトの中だけにあるのではないのです。
この場合、そのヒントを自然界からのアナロジーに求めたわけですね。
そして、マッコウクジラが潜水したり浮上したりするときに活躍する「脳湯」と呼ばれる油に着目したわけです。
ただし、脳湯をそのまま潜水艦に持ってくるわけには行きません。
更にアイデア出しを進めます。
そしてまさにパラフィンワックスが同様の挙動を示すことに気づいたのです。
多分、この技術を開発した先生達はTRIZについて知らないと思います。
したがって、実際の思考は、
「潜水艦の浮力調整を実現したい。⇒潜水艦みたいに水の中で浮いたり沈んだりするものって何かないかな?(アナロジー)⇒鯨なんてぴったり⇒じゃ、鯨ってどういう風に浮いたり沈んだりする?⇒脳湯ってなに?⇒・・・」
ってな感じで、最後はパラフィンにたどり着いたのだと思います。
上記の場合の発想では、潜水艦から鯨をアナロジーするところが恣意的になりますから、ここが問題解決の方針におけるクリティカルポイントです。
TRIZを使えば、問題解決の方向性を「相変化原理」という先人達の知恵に基づいて示してくれますから、このクリティカルポイントに恣意性が入らなくなり、多くの場合の問題解決スピードが上がります。
しかし、最終的にアイデアを具体的にするのは、結局開発者の知識であることは肝に銘じておかねばなりません。
相変化を利用すればいいのだけど、その具体化に知識が無ければ結局何も生まれませんから。
常日頃から、あらゆるものにアンテナを立てておくこと、しかもそれをストックしておくことが、優れた問題解決の基礎になるのです。
本日もお読みいただいてありがとうございます。
ご意見や感想などありましたら、コメントをいただけるとうれしいです!
必ずご返事は差し上げます。
また明日も読みたいと思ったら是非クリックをお願いします!
by kuwahara_TRIZ
| 2005-09-11 10:32
| TRIZ