2012年 01月 21日
インテリジェンスとは決断のための知性 |
昨日今日と、仕事の移動時間を縫って、2冊読破しました。
一冊目は「ブラックスワン降臨」手嶋龍一著:新潮社 についての読後感です。
はっきり言って、久々に「面白いノンフィクション(若干、これからの予想もあるから少しフィクションもありますが(汗))」でした。
帯には「それは、インテリジェンスの真空地帯・日本に舞い降りた。同時多発テロから福島原発事故-この10年は恐るべき回路でつながっている…。」
・・・・
ブラックスワンとは、皆さんご存知のように、今までありえないと考えていたことが、たった一つの発見で覆されるということのメタファーですね。
ナシーム・ニコラス・タレブが「確率論や従来からの認識・経験からでは予想できない現象」として記した「ブラックスワン」ダイヤモンド社から発売されてますから、詳しくはそちらを参考に。
で、本題。
9・11同時多発テロで、初めてアメリカ本土が攻撃された事。
3・11東日本大震災による福島原発事故が起きた事。
いずれも、「想定外」という文脈で語られることが多いですね。
でも、この本によるとそれぞれの「想定外」の意味合いが違っていることがわかります。
そのキーワードが「インテリジェンス」。
日本語で「インテリジェンス」と書くと「情報」と訳されることが多いですが、本来の意味合いはもっと深くて、多くの不確実な情報の中から確度の高いであろう情報をつなぎ合わせて将来を予測する事。
違う言い方をすれば、それを得るための情報網というかネットワークの深さという感じでしょうか…。
権限を持った人が決断をするために必要な情報とシナリオを、どれだけの説得力を持って構築できるかが「インテリジェンス」という言葉の本質のように感じました。
そう考えれば、上の2つの事象における「想定外」の重さの違いが判ると思います。
アメリカは、同時多発テロが起こるであろうという「情報」をすでにつかんでいた。
しかし、これまでの経験上、アメリカ本土が標的にされてきたことが無いという「思い込み」が、それらの情報を「インテリジェンス」化できなかった。
その後の対応(イラク戦争やタリバン攻撃など)についても、CIAや様々なネットワークからもたらされた情報を「インテリジェンス」化できなかった事が、戦争を泥沼化させた原因だと。
ただ、アメリカをはじめとする様々な西欧諸国やロシア、中国などは「インテリジェンス」を構築するための国際的な深い(アングラな)情報網を持っているみたいです。
日本には、悲しいかなそういう外交上の様々な局面を打開するだけの「インテリジェンス」をつくる事が出来ない。
しかも「外国の情報」だけではなく「国内の情報」でさえも同様という現実。
歴史の針を少しだけ戻して、3・11に起きた「福島第1原発事故」。
アメリカは、いつでもその処理対応できるだけの体制を敷いていたそうです。
*その教訓は、阪神淡路大震災に遡るのだそうですが・・・・
しかし、日本の政治家たちは、危機感も希薄でアメリカやその他の国の災害対応準備に「対応」できなかった。
本の後半は、そういう日本政府の危機管理能力の欠如を、「劇薬」という風情で書いています。
・・・・あまり多くを書くとネタバレするのでこの辺にしておきますが、これを我々のビジネスに置き換えて見たらどうでしょう。
もっとたくさんの情報が集まったら判断する。
他社の成功事例を見て判断する。
本当にそれで成功するかどうか見極めて判断する…。
多分、ビジネスの世界もそういう魑魅魍魎とした世界なのでしょうね。
だからこそ「インテリジェンス」を先に獲得した方が、ビジネスの主導権を握りやすいし、成功する確率も高い。
・・・・・
そうそう、この本では決断を下すものの責任についても触れています。
冒頭で、ウサマ・ビンラディンが、パキスタンの隠れ家で暗殺されるときの作戦命令を下したオバマ大統領の結果責任に対する考え方が臨場感あふれる描写で出てきます。
今回の「ネプチューンの槍」作戦がばれない為のさまざまな伏線と工作。
そして、実行の段階では前線にすべてを任せて結果責任だけを自分が取る覚悟を、送信画像を見つめるオバマ大統領と口を押えてたヒラリークリントン国務長官からも受け取ることができました。
一方で、福島原発事故での鳩山元首相の対応についても「インテリジェンス」が無さすぎると言及しています…
決断するということはリスクを取るということなんでしょう。
そして、自分で決断した以上、その結果責任は自分に帰結する。
決断できない、そもそも「インテリジェンス」のない中で、自分がどう決断していいのかもわからないのでは・・・・。
「覚悟」も何もあったもんじゃない。
・・・・
私自身が、自分のことと重ね合わせた言葉がP.235にあります。
「情報とはいくら命じても集まってくるものではない。自らの信望ゆえに集まってくるものなのだ。」
自戒を込めて。
もう一冊は、「ビジネスマンのための「行動観察」入門」:松波晴人さんの本なのですが、それはまた次回書きますね。
一冊目は「ブラックスワン降臨」手嶋龍一著:新潮社 についての読後感です。
はっきり言って、久々に「面白いノンフィクション(若干、これからの予想もあるから少しフィクションもありますが(汗))」でした。
帯には「それは、インテリジェンスの真空地帯・日本に舞い降りた。同時多発テロから福島原発事故-この10年は恐るべき回路でつながっている…。」
・・・・
ブラックスワンとは、皆さんご存知のように、今までありえないと考えていたことが、たった一つの発見で覆されるということのメタファーですね。
ナシーム・ニコラス・タレブが「確率論や従来からの認識・経験からでは予想できない現象」として記した「ブラックスワン」ダイヤモンド社から発売されてますから、詳しくはそちらを参考に。
で、本題。
9・11同時多発テロで、初めてアメリカ本土が攻撃された事。
3・11東日本大震災による福島原発事故が起きた事。
いずれも、「想定外」という文脈で語られることが多いですね。
でも、この本によるとそれぞれの「想定外」の意味合いが違っていることがわかります。
そのキーワードが「インテリジェンス」。
日本語で「インテリジェンス」と書くと「情報」と訳されることが多いですが、本来の意味合いはもっと深くて、多くの不確実な情報の中から確度の高いであろう情報をつなぎ合わせて将来を予測する事。
違う言い方をすれば、それを得るための情報網というかネットワークの深さという感じでしょうか…。
権限を持った人が決断をするために必要な情報とシナリオを、どれだけの説得力を持って構築できるかが「インテリジェンス」という言葉の本質のように感じました。
そう考えれば、上の2つの事象における「想定外」の重さの違いが判ると思います。
アメリカは、同時多発テロが起こるであろうという「情報」をすでにつかんでいた。
しかし、これまでの経験上、アメリカ本土が標的にされてきたことが無いという「思い込み」が、それらの情報を「インテリジェンス」化できなかった。
その後の対応(イラク戦争やタリバン攻撃など)についても、CIAや様々なネットワークからもたらされた情報を「インテリジェンス」化できなかった事が、戦争を泥沼化させた原因だと。
ただ、アメリカをはじめとする様々な西欧諸国やロシア、中国などは「インテリジェンス」を構築するための国際的な深い(アングラな)情報網を持っているみたいです。
日本には、悲しいかなそういう外交上の様々な局面を打開するだけの「インテリジェンス」をつくる事が出来ない。
しかも「外国の情報」だけではなく「国内の情報」でさえも同様という現実。
歴史の針を少しだけ戻して、3・11に起きた「福島第1原発事故」。
アメリカは、いつでもその処理対応できるだけの体制を敷いていたそうです。
*その教訓は、阪神淡路大震災に遡るのだそうですが・・・・
しかし、日本の政治家たちは、危機感も希薄でアメリカやその他の国の災害対応準備に「対応」できなかった。
本の後半は、そういう日本政府の危機管理能力の欠如を、「劇薬」という風情で書いています。
・・・・あまり多くを書くとネタバレするのでこの辺にしておきますが、これを我々のビジネスに置き換えて見たらどうでしょう。
もっとたくさんの情報が集まったら判断する。
他社の成功事例を見て判断する。
本当にそれで成功するかどうか見極めて判断する…。
多分、ビジネスの世界もそういう魑魅魍魎とした世界なのでしょうね。
だからこそ「インテリジェンス」を先に獲得した方が、ビジネスの主導権を握りやすいし、成功する確率も高い。
・・・・・
そうそう、この本では決断を下すものの責任についても触れています。
冒頭で、ウサマ・ビンラディンが、パキスタンの隠れ家で暗殺されるときの作戦命令を下したオバマ大統領の結果責任に対する考え方が臨場感あふれる描写で出てきます。
今回の「ネプチューンの槍」作戦がばれない為のさまざまな伏線と工作。
そして、実行の段階では前線にすべてを任せて結果責任だけを自分が取る覚悟を、送信画像を見つめるオバマ大統領と口を押えてたヒラリークリントン国務長官からも受け取ることができました。
一方で、福島原発事故での鳩山元首相の対応についても「インテリジェンス」が無さすぎると言及しています…
決断するということはリスクを取るということなんでしょう。
そして、自分で決断した以上、その結果責任は自分に帰結する。
決断できない、そもそも「インテリジェンス」のない中で、自分がどう決断していいのかもわからないのでは・・・・。
「覚悟」も何もあったもんじゃない。
・・・・
私自身が、自分のことと重ね合わせた言葉がP.235にあります。
「情報とはいくら命じても集まってくるものではない。自らの信望ゆえに集まってくるものなのだ。」
自戒を込めて。
もう一冊は、「ビジネスマンのための「行動観察」入門」:松波晴人さんの本なのですが、それはまた次回書きますね。
by kuwahara_TRIZ
| 2012-01-21 07:16
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